真っ白な民族――カスミソウ
ずっと、ずっと遠くの星のお話です。
町の一角に“秀逸”という名の一族が住んでいました。
隣の町には“平凡”という名の一族も住んでいました。
それぞれがそれほど交流することもなく、
それぞれにそれなりに楽しく暮らしていました。
いつの間にか、それぞれの町境に、
白いローブに身を包んだ、白い小顔の一族が
たくさんに集まって、自分たちの集落をつくりました。
そして、清楚で慎ましく、可愛い笑顔を振り撒いては、
“秀逸”たちとも“平凡”たちとも仲良く交わって暮らし始めました。
“秀逸”たちは白い民族とふれあうとき、
自分たちの素晴らしい民族の血がいちだんと輝いているのを知りました。
“平凡”たちは白い民族とふれあうとき、
ありふれた存在の自分たちが面映いまでに輝いているのを知りました。
そして、“秀逸”と“平凡”と白い一族が交わって宴を開いたとき、
みんなの楽しい笑い声があたり一帯に響きました。
それは、えもいえず美しい“生かしあい”というハーモニーでした。
白い一族たちはこうして、
“秀逸”をいっそう引き立て、“平凡”に見違えるような光彩を与え、
そして両者の仲立をしては、新しい美を創造し、
そんな、“みんなのために在る”ことに忙しくしていたのです。
たまにでしたが、自分たちだけでくつろぐこともありました。
森の大きな泉に朝霧がたちこめた時、彼らは一斉に白いローブを脱ぎ捨て、
集団で水浴びするのでした。
どんな素肌をしていたか、ですって？
それはそれは真っ白な、白いローブにも増して美しく透き通るような白さでした。
彼らの姿を偶然見かけた“秀逸”の仲間も、“平凡”の仲間も、
その美しさに驚き、何か不思議なものでも見たようにぽかんとしていたそうです。
写真のカスミソウは、下記から使用させていただきました。
→「季節の花 ３００」http://www.hana300.com
